子宮筋腫
子宮筋腫とは子宮筋層に発生する良性腫瘍であり、発生・増大にエストロゲンが関与するエストロゲン依存性疾患です。婦人科疾患の中で最も多く、成人女性の20〜30%に子宮筋腫があるといわれています。
子宮筋腫の主な症状
- 過多月経、不正性器出血に伴い鉄欠乏性貧血
- 月経困難症
- 不妊症
- 下腹部腫瘤、下腹部痛、腰痛
- 膀胱圧迫による頻尿
以上のような症状がある方は子宮筋腫の可能性が高いので、すみやかに超音波検査を受けましょう。また逆に全く症状もなく検診で見つかる事も多いです。
子宮筋腫は発生する場所によっては不妊の原因(着床障害)にもなります。また妊娠中に子宮筋腫は大きくなる事が多く、切迫流産や切迫早産のリスクが高くなります。子宮筋腫の場所によっては正常分娩が困難となり帝王切開を選択することもあります。これから妊娠をご希望されている方は超音波検査を受けることをお勧めします。
子宮筋腫の分類
粘膜下筋腫
過多月経、不妊症の原因となるため外科治療が必要になる事が多い。
筋層内筋腫
頻度は70%と最も多い。月経痛や腰痛が強い場合には治療することもある。
漿膜下筋腫
無症状のことが多いが、子宮筋腫の茎捻転を起こすと急性腹症をきたすこともある。
子宮筋腫の治療
子宮筋腫は必ず治療が必要というわけではありません。筋腫の部位と大きさ、そして年齢や挙児希望の有無によって判断します。また過多月経による鉄欠乏性貧血の程度、圧迫症状、疼痛などを総合的に判断して行います。
経過観察
3−6ヶ月に1回超音波で大きさチェックをします。大きさに変化がある時はMRI検査を受けて頂くこともあります。また貧血や月経痛に対しては鉄剤や鎮痛剤を処方します。
薬物療法
偽閉経療法という治療法があります。子宮筋腫はエストロゲン依存性のため閉経後に小さくなります。偽閉経療法はリュープリンという注射を使ってエストロゲンの分泌を抑えて子宮筋腫が大きくならないようにする方法です。術前に偽閉経療法を行い子宮筋腫を縮小させてから手術療法を行うこともあります。ただし偽閉経療法は人工的に閉経させる方法なので更年期症状が出る方もいます。その際は漢方薬などを併用します。
手術療法
手術は様々な方法がありますが大きく分けて、子宮を全て摘出する『子宮全摘術』と『子宮筋腫核出術』があります。『子宮筋腫核出術』は子宮の温存し筋腫のみを取る手術法です。
どちらも開腹手術、腹腔鏡下での方法があります。その他には粘膜下筋腫に対して子宮鏡を用いて経腟的に筋腫を核出する方法もあります。子宮筋腫核出術は子宮を温存できるため、妊娠を希望されている方が選択する事が多いです。ただ再発も多いため、術後も定期的なチェックが必要です。また分娩は帝王切開になる可能性が高いです。
手術療法を希望されない場合には子宮動脈塞栓術やMRガイド下集束超音波療法もあります。